ドップラー分光法
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2020年までの各年に発見された太陽系外惑星の発見方法の内訳 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  タイミング法(TTV法パルサータイミング法など)  ドップラー分光法   トランジット法   重力マイクロレンズ法   直接撮像法

本項では太陽系外惑星の発見方法について述べる。

惑星は自ら光る恒星と比べて、非常にかすかな光を反射しているに過ぎないため外部から見ると非常に発見しにくい天体である。例えば、太陽のような恒星は、惑星が反射する光の約10億倍の明るさを持つ。そのようなわずかな光を検出するという本質的な難しさに加え、恒星の光が惑星からの光をかき消してしまう場合もある。

こうした理由から、2014年4月までに発見された太陽系外惑星のほとんどは直接観測されていない。

太陽系外惑星の発見方法には惑星を直接観測することで発見する直接法(英語: Direct method)と、惑星が恒星に及ぼす影響などから間接的に惑星を発見する間接法(英語: Indirect method)とに分けられる[1]

現在の観測技術で太陽系外惑星を直接観測することは困難であり、2020年時点で存在が知られている太陽系外惑星の大部分は間接法によって発見されている。
確立された観測方法

以下に、これまでに1例でも太陽系外惑星を発見・検出できたことのある観測方法について記述する。
ドップラー分光法いるか座18番星bの視線速度曲線

ドップラー分光法[2]英語: Doppler spectroscopy)、惑星の重力で主星がわずかに移動する様子を捉えることで惑星を発見する手法である。視線速度法(英語: Radial velocity)やドップラー法[2][3]、ドップラー偏移法[4]、ドップラーシフト法[5]とも呼ばれる。一見すると恒星は動いていないように見えるが、周囲を公転する天体が存在している場合、その重力の影響を受けてわずかにふらついて揺れ動いている。この小さな揺れで生じるドップラー効果によって主星から届くスペクトル線の変化(ドップラー偏移)から、周囲を公転する惑星の存在を観測する事が出来る[2][3][4]惑星の重力で恒星が揺れ動く様子を誇張して描いたアニメーション動画

惑星の重力による恒星の揺れの振幅 K {\displaystyle K} は、恒星の質量 M ∗ {\displaystyle M_{*}} 、惑星の質量 M p {\displaystyle M_{p}} 、惑星の公転周期 P {\displaystyle P} 、惑星の軌道離心率 e {\displaystyle e} 、惑星の軌道傾斜角 i {\displaystyle i} 、万有引力定数 G {\displaystyle G} を用いて以下のように表される[3][4]。恒星の質量がこれとは別の独立した手法で求められている場合、恒星の視線速度の変化を表した視線速度曲線から振幅、公転周期、軌道離心率を求めることができ、これらを式に代入すると惑星の質量を求めることができる。この式を見ると、主星に近く質量が大きい惑星ほど振幅が大きくなることがわかる。そのため、ドップラー分光法ではホット・ジュピターのような恒星に非常に近い距離を公転する巨大ガス惑星が発見されやすい傾向にある[2][3][4]。 K = ( 2 π G P ) 1 3 1 1 − e 2 M p sin ⁡ i ( M ∗ + M p ) 2 3 {\displaystyle K=\left({\frac {2\pi G}{P}}\right)^{\frac {1}{3}}{\frac {1}{\sqrt {1-e^{2}}}}{\frac {M_{p}\sin i}{(M_{*}+M_{p})^{\frac {2}{3}}}}}

主星の揺れの振幅は、例えば、木星が太陽にもたらす揺れの振幅は 12.4 m/s なのに対して、地球の場合だとわずか 10 cm/s しかない[3][4]。しかし、1 m/s ほどの速度で恒星が揺れているならその揺れを分光器で捉えることが可能で、現時点ではそのような高性能な分光器としてチリラ・シヤ天文台にある口径3.6メートルの高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)やW・M・ケック天文台HIRESなどがある。現在主に使われているドップラー偏移の観測法は、EDI(Externally Dispersed Interferometer)とよばれる方法である[6]。EDIとは、モアレ(干渉縞)を使用することで精度の低いスペクトルであってもドップラー偏移を観測する方法であり、通常のスペクトルの偏移を確認するよりも簡単にさらに安価に行うことができる[7]

2012年頃までは太陽系外惑星の発見に最も使用された発見方法であった。ドップラー分光法は恒星との距離には依存しないが、高精度の識別には高いSN比を要する。そのため、ドップラー分光法は地球から約160光年以内にある比較的近い恒星がよく対象にされるが、木星質量を越える惑星ならば地球から数千光年離れていても検出することは可能である[注 1]。1つの望遠鏡で複数の恒星を同時に観測する事は出来ない。現在の分光器では主星から約10 au離れた惑星も捉えられるが、発見までには長い時間がかかる。現在の観測技術で地球質量程度の惑星が検出できるのは、主星が低質量であって軌道が主星に近い場合で、例えばプロキシマ・ケンタウリbなどに限られる。

ドップラー分光法は質量が小さい恒星の周りを公転する惑星も検出しやすい傾向がある。それには2つの理由があり、1つ目は低質量の方が相対的に惑星の重力の影響を大きく受けやすい事と(上記の式でも、恒星の質量が小さいと振幅が大きくなることがわかる)、2つ目は低質量の主系列星自転周期が遅い事にある。自転が速いと、観測者から見て恒星面の半分がすばやく遠ざかり、一方でもう半分も急激に近づくため、スペクトル線が不明瞭になってしまう。そのため、ドップラー分光法による惑星探索がよく行われるのは、太陽のようなG型星を含む晩期K型星から早期F型星までで、自転が速い傾向にある晩期F型星、A型星B型星ではドップラー分光法による惑星探索はあまり行われていない[3][8]。一方で、主系列星の段階を離れて準巨星巨星レッドクランプの段階へ進化すると、外層の膨張により表面温度が低下してスペクトル線が多くみられるようになるのに加えて自転も遅くなるため、質量の重い恒星であってもドップラー分光法による惑星の検出が容易になる[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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